米FRBは6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で1994年以来となる0.75%ポイントの利上げを実施。7月も0.75%ポイントの利上げを続けました。パウエル議長の会見で、大幅利上げ継続の姿勢が見られたものの、今後の利上げ幅縮小の可能性も示されたことで、前回の会合後、市場では次回9月のFOMCで0.50%利上げを見込む動きが広がりました。米第2四半期GDPが弱く出たことで、0.75%利上げの期待がさらに低下する動きも見られました。しかし、5日の雇用統計が強く出たことで、ふたたび0.75%ポイントの利上げを期待する動きが強まりました。
もっとも10日に発表された米消費者物価指数(CPI)が前回から大きく鈍化。エネルギー価格の上昇が7月に入って抑えられたことで、ある程度は鈍化するという見通しが広がっていましたが、予想を下回る伸びにとどまったことで、0.75%利上げの必要性が後退したとの見方が広がっています。
このように市場の見通しが大きく揺れる背景には、米国の物価高を受けた景気の先行き見通しの不透明感があります。鈍化したとはいえ、水準的にはまだ相当に高い米国の物価水準。堅調な雇用情勢を受けて賃金の上昇も見られますが、物価高に追いつくものではないため、市民生活にはかなり厳しい状況が続きます。こうした物価上昇を抑えるため、米FRBは利上げを当面継続するとみられますが、金利上昇は企業の設備投資、家計の住宅投資などにとっては向かい風となります。家計にとってみれば、給料が上がって家を買いたいという希望はあるものの、原料・人件費などの高騰で住宅価格自体がかなり上昇していることに加え、住宅ローン金利の上昇で負担が高まり、なかなか手が出ないという状況です。
こうした中、今週は米個人消費動向を示す米小売売上高(7月)と、米国の住宅市場動向を示す米住宅着工(7月)が注目されるところとなっています。
まずは17日に発表される7月の米小売売上高。第2四半期の米個人消費は前期比年率+1.0%と、市場予想の+1.2%、第1四半期の+1.8%に届かない冴えない結果となりました。全体がマイナスとなった背景には設備投資・住宅投資のマイナス、中でも在庫調整分の大きなマイナスがありますが、個人消費の冴えない伸びが全体を支え切れなかった面も大きいです。
小売売上高をみても、5月分が前月比-0.1%とマイナス圏に沈んでおり、厳しい状況が見られました。もっとも6月分は前月比+1.0%と3月分の+1.4%以来の好結果に。自動車及び同部品を除くコアも+1.0%と3月分の+2.1%以来の好結果となって、今後の個人消費回復に向けた期待につながりました。
ただ、内訳を見ますとガソリンスタンド売り上げが前月比+3.6%と高い伸びを示しています。これはガソリン価格の上昇が影響したもの(車社会でガソリンは生活必需品のため、価格上昇が販売量の減少に与える影響が小さく、全体の販売額が大きくなる)。7月に入ってガソリン価格が全米全種平均で7.5%も低下(米エネルギー情報局調査)しており、米消費者物価指数の鈍化要因となったことを考えると、今回は弱く出る可能性があります。
市場予想は前月比+0.3%、自動車及び同部品を除いたコアの前月比が+0.2%となっています。雇用統計が強く出ると、小売売上高も強い数字が出ることが多いですが、流石に伸びが鈍化する見込みです。要因がはっきりしている分、予想前後であれば影響は限定的と見られますが、予想を超えて鈍化し、前月比マイナス圏などを見せると警戒感からのドル売りが広がる可能性があります。
MINKABU PRESS 山岡和雅