FRBの利上げについては現時点で材料がほぼ出揃ったという状況。その中で、次の市場のテーマは来年の景気後退に入っている。本当に来年にも景気後退に陥るのか、陥ったとしてもどの程度なのかに注目を集め出している模様。そのような中で市場では FRBが今後動きを軟化させる可能性が高く、来年後半にも利下げ開始との予想も出始めている。成長は鈍化し、恐らく予想よりも早く金利は低下するとの見方が市場に出始めているようだ。
きょうは米国債利回りの下げが一服しているが、今週は大きく流れを変え、前日の米10年債利回りは一時3.00%付近まで急低下した。それに伴ってドルは戻り売りを強め、ドル円も134円台に何度か下落したものの、135円台に買い戻される展開が続いている。
米国の景気後退は世界の景気後退とほぼ一致するものと思われるが、その場合、市場が期待している日銀の緩和解除も遠のく可能性があるということ。しばらくは、日銀と各国中銀との金融政策の格差が縮小されることもなく、円はもうしばらく売りやすい状況が続くと見ているのかもしれない。
ユーロドルは底堅い値動きを続けており、1.05ドル台での推移が続いた。ただ、積極的に戻りを試そうという雰囲気まではない。本日の21日線が1.06ドルちょうど付近に来ているが、その水準にはなお慎重なようだ。
世界経済が弱体化しているにもかかわらず、FRBが大幅利上げを継続した場合、最も弱気なシナリオで、ユーロドルは2023年末までに0.85ドルまで下落する可能性があるとの指摘も出ている。最も弱気なシナリオとは1980年代初期のスタグフレーションだという。このユーロドルにとっての最悪のシナリオでは、世界の株式市場も2020年春に見られたレベルまでさらに下落する可能性もあるとしている。
それとは逆に、FRBが利上げサイクルを早期に終了すれば、ユーロドルは今年後半にも回復するとの見方も出ている。その場合、1.08ドル付近まで上昇する可能性があるという。2023年にはFRBが緩和に転じ、ユーロ圏がスタグフレーションから早期脱却するため、ユーロドルは緩やかな上昇軌道を維持し、2023年末までに1.15ドルに達する可能性があるとしている。
ポンドドルはNY時間に入って一時1.23ドル台に上昇する場面が見られたものの、そこから先には慎重で、1.22ドル台での推移が続いた。先週のFOMC以降、ポンドドルはリバウンド相場の展開を見せているが、ここに来て上値が重くなっており、ここ数日は1.22ドル台を中心とした上下動に終始している。本日の21日線は1.23ドル台後半に来ているが、その水準を積極的に試そうという気配まではまだない。
一部からは、市場は英中銀の利上げ予想を縮小せざるを得なくなり、それに伴ってポンドは弱含むとの見方も出ている。英経済の悪化を示す証拠からすると、市場が織り込んでいる利上げ期待は積極的過ぎるという。8月の利上げは0.25%ポイントに留まり、そこで利上げサイクルは終了し、金利のピークは1.50%と予想。これに対し、市場は依然として3%超のピークで織り込んでいる。その場合、ポンドドルは2023年第4四半期までに1.15ドルまで下落する可能性もあるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美