パウエルFRB議長が先週のジャクソンホールでの講演で、「インフレ対策として金利をさらに上昇させる必要がある」と述べたことを受けてドルが上昇。FRBは、利上げが自国経済に大きなリスクとなっている他の中央銀行とは一線を画している雰囲気もある。
パウエル議長の講演がドルを上昇させ、ドル強気派は更なる上昇を視野に入れている。これは明らかにタカ派なFRBと、タカ派ではあるが懸念を募らせているECBなど他の中央銀行との間のかい離を背景にした動きだとの指摘も聞かれる。
ユーロドルはNY時間にかけて買い戻しが膨らみ、パリティ(1.00ドル)を一時回復。ただ、パリティを回復すると戻り待ちの売り圧力も強まるようで、再び0.99ドル台に値を落とす動きも見られている。
市場からは、ECBの積極利上げ観測でユーロの下値は限定的になるとの観測も出ている。市場は、来週木曜日のECB理事会を前にユーロの下値を試すことに慎重になっているとしている。一部のECB理事が来週9月8日の理事会で0.75%ポイントの利上げ議論を要請しているとの報道が流れていた。
シュナーベルECB専務理事も週末に、「経済成長がリスクに直面しているにもかかわらず、中央銀行は高騰するインフレと闘うために決意を持って行動する必要がある」と述べていた。そのため、市場はECB理事会を前にユーロの下値を試すのに慎重になっている傾向があるという。
ポンドはNY時間にかけて買い戻しが膨らみ、1.17ドル台に戻す展開。しかし、本日は一時1.16ドル台半ばまで下落し、2020年3月以来の安値水準を更新した。
市場からは、英経済は第4四半期からリセッション(景気後退)に入り、来年の第2四半期までに実質GDPが1%程度縮小するとの予想も出ている。ただ、財政支援によりエネルギー価格高騰の影響が相殺されること、家計が貯蓄の一部を消費すること、労働市場が堅調な勢いを保つことから、リセッションは比較的穏やかなものになるとも指摘。一方で、ガス価格の高騰が長引けば、景気後退がより深刻で長期化するリスクもあるという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美