非農業部門雇用者数(NFP)は43.1万人と予想を下回ったものの、高水準の雇用の伸びが示され、失業率は3.6%まで低下。インフレが強まる中で、所得の伸びが気掛かりな点となっているものの、平均時給の伸びは前年比で5.6%と強い伸びを示している。インフレの伸びには及ばないものの、許容範囲であろう。力強い労働市場が堅持されており、FRBからすれば、成長よりもインフレ抑制に注力するのに十分な数字かもしれない。
米国債市場で逆イールドの動きが加速している。2-10年債はマイナス6ポイントまで逆イールドが拡大しており、2-30年債も2007年以来の逆転となっている。逆イールドは通常、景気後退のシグナルとも言われているが、それがいつ起こるかを正確に予測するものでもない。歴史的には平均20カ月先とも言われている。しかし、今後の米経済が減速していくことは明らかであり、誰もがその事実を認識する必要はあるとの見解は聞かれる。
ユーロドルは戻り売りに押されている。米雇用統計を受けたドル買いがユーロドルを圧迫。本日の21日線は1.1005ドル付近に来ているが、目先は1.10ドル台を維持できるか注目される。
次第に上値が重くなっているユーロドルだが、回復を期待する声も出ている。ECBが良好な資金調達環境を維持するために、従来考えられていたよりも利上げ幅を縮小する可能性はあるという。しかし、その場合でもユーロは回復が見込まれると指摘。ウクライナ危機によりユーロに加わっているリスクプレミアムは、今後12カ月の間に少なくとも部分的に逆転し、安全資産であるドルへの資金流入が緩やかになり、特に今年後半のユーロ上昇が期待されるとしている。ただ、その場合でもウクライナ危機前の予想である1.20ドルには届かない可能性が高いが、2023年3月末までに1.15ドルまでの上昇は期待できるという。
ポンドドルは軟調な展開が見られており、一時1.30ドル台に下落。本日の21日線が1.3135ドル付近に来ているが、21日線の上値抵抗は強い印象。ポンド絡みの直接的な材料は乏しく、ドルやユーロといった他の材料に翻弄される展開。ウクライナ情勢にもほとんど反応を示していない状況だ。
今週はポンドを動かす材料がほとんどなく、先週のベイリー英中銀総裁の慎重姿勢を強調した発言が、FRBのタカ派トーンとの対照で、なお市場に響いている可能性がある。しかし、短期金融市場では、英中銀は年内にもう1.38%の利上げで織り込む動きが見られている。その場合、政策金利は2.00%を超えることになる。一部からは、市場は今年の英中銀の利上げを楽観視し過ぎており、今後数週間でFRBと英中銀の格差が明確になり、ポンドドルは1.30ドル割れを試すリスクも留意されるとの声も出ている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美