明日は5月の米雇用統計が発表され、市場の注目を集めている。非農業部門雇用者数(NFP)は前月比32.5万人増と前回よりは伸びが緩むと見込まれている。その一方で、失業率は3.5%まで低下し、平均時給は前月比0.4%の上昇が見込まれている。NFPの伸び鈍化は労働需要の軟化というよりも、労働者の供給が制限された結果との分析も出ており、労働力不足が引き続き賃金上昇圧力をかけていることが示される可能性があるという。
この状況は今後数カ月に渡って劇的に変化することはなく、基本的なインフレ圧力は続くが、それがドルに方向性を与える可能性は低いと指摘している。FRBはすでに、インフレリスクに対して大規模かつ決定的な金利措置を取っており、失業率が0.1%ポイントの低下または上昇したとしても、FRBの現在のアプローチには何の変化も与えないという。従って、今回の米雇用統計はドルに決定的な影響を与えるものにはならないと見ているようだ。
なお、きょうはブレイナードFRB副議長の発言が伝わり、副議長は「9月の利上げ休止は非常に想定しにくい」と述べた。発言が伝わった直後はドル円も130円台に戻す場面が見られたものの、一時的な動きに留まっている。
ユーロドルは1.0740ドル付近まで上げ幅を拡大。市場はECBの利上げ期待を高めており、7月の利上げ開始以降、年末までのいずれかの理事会で0.50%ポイントの大幅利上げを実施との見方を織り込む動きが出ている。
ただ、ユーロドルの先行きに弱気な見方は依然として根強く、6月末までに1.05ドルまで下落する可能性も指摘されている。高インフレがECBの利上げ期待を支える一方で、市場はすでにECBの利上げをかなり織り込んでおり、強気になる理由を探すのに苦労しているという。年内に計1.00%ポイントの利上げを市場は想定しているが、行き過ぎとの声も聞かれる。
一部からはパリティ(1.00ドル)まで下落との見方も出ている。ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも、ユーロドルはパリティまで下落する可能性があり、別の方向性を見出すのは難しいという。
ポンドドルは1.25ドル台後半まで買い戻されている。前日は1.2460ドル付近まで一時下落し、21日線を試すかにも思われたが、その水準は堅持している。明日の米雇用統計を受けて、5月中旬以降のリバウンド相場に回帰するか注目される。
ただ、ポンドに弱気な見方も根強い。英中銀が今月16日の金融政策委員会(MPC)で0.50%ポイントの利上げを実施すれば、ポンドは上昇の可能性もあるが、その可能性は低く、0.25%ポイントの通常利上げに留まると見られている。そのため、今後数カ月間、ポンドは苦戦を強いられるとの予想が多いようだ。
英国は主要国の中で、遥かに困難な経済環境、遥かに困難な政策選択、遥かに困難な政治環境に直面していることがポンドを圧迫するという。英中銀の利上げに関する上振れサプライズがあれば別だが、ポンドドルは1.20ドルまで下落する可能性もあると指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美