ただ、きょうは日銀決定会合後の黒田総裁の会見を受けて円安が強まり、ドル円も138円台後半まで上昇する場面が見られていた。黒田総裁は会見で「金利を引き上げるつもりは全くない。今の円安はドルの独歩高。金利をちょこっと上げたらそれだけで円安が止まるとは到底考えられない」と述べていた。止めるには大幅な利上げが必要になり、経済に物凄いダメージになるとの認識を示していた。
今回は展望レポートも公表され、予想通りにインフレ見通しを上方修正していた。一方、GDP見通しについては、2022年度は2.4%に下方修正したものの、2023年度については逆に前回の1.9%から2.0%に上方修正していた。来年はリセッション(景気後退)の警戒感も高まっている中で意外感もあったが、現段階では中々、景気後退を織り込めないのかもしれない。
ユーロドルはこの日のECB理事会を受けて上下動。ECBは予想外の0.50%ポイントの大幅利上げを打ち出した。8年続けたマイナス金利を終了し、発表直後はユーロも買いを強め、ユーロドルは1.0280ドル近辺まで上昇した。しかし、その上げを維持できずに、今度は急速に売りが強まり、ユーロドルは1.01ドル台に下落している。
ECBはユーロ圏国債の断片化(フラグメンテーション)の防止策として、金融政策の伝達保護のための「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」と名付けた債券購入策を発表。ただ、市場はこの新たな断片化防止策に十分納得していないようだ。複雑で実行が難しいように見えるとの指摘も出ている。
この制度は、ECBが効果的な利上げでインフレ抑制を支援するか、それともさらなる頭痛の種となるかを左右する鍵とも言われている。市場では後者の見方を強めている模様。イタリアでドラギ首相が辞任を表明し、政情不安が強まっている。今回の防止策はイタリアが主な対象と見られているが、効果に懐疑的な見方も多い。発表後にイタリアとドイツ国債の利回りスプレッドは拡大している。
また、ラガルド総裁が9月について、従来のガイダンスを破棄し、フォワードガイダンスを示さなかったことも、市場の不安感を強めたようだ。ECBはフォワードガイダンスを示さないほうが柔軟な対応ができるとしている。
ポンドはECB理事会を受けたユーロの動きに振らされる展開。ユーロドルの下落と伴にポンドドルも一時1.18ドル台に下落する場面が見られた。
きょうは英国立統計局(ONS)が6月の公的部門純借り入れを発表していたが、債務の利払いは194億ポンドでこれまでの最高記録の2倍以上に膨らんだ。物価連動債の指標である小売物価指数(RPI)が4月に大幅な上昇だったことを反映したとしている。前年比で103億ポンドの増加。
政府借入金は229億ポンドと、前年比41億ポンド増となり、記録開始以来の2番目の高水準となった。これは英予算責任局(OBR)の予測を6億ポンド上回っている。
市場からは、英消費者物価指数(CPI)が6月の9.4%から10月に約12%まで上昇し、生活費危機が深刻化した場合、次期首相の家計救済策は制限される可能性があるとの指摘も出ており、利払い急増はポンドにとって圧迫要因と見られているようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美