米CPIは総合指数で前年比8.3%と前回よりはやや鈍化したものの、予想を上回る内容となった。ガソリン代の負担は軽減されたものの、食品を始め、生活費がなお高騰している状況を映し出している。CPI全体の約3分の1を占める住居費は1990年代初期以来の伸びとなった。
ドル円は一時144.70円付近まで上昇。米CPI発表前は141円台に下落していたが、一気に買い戻され、再び145円をうかがう展開を見せている。
市場は今回の米CPIにインフレのピークを示すとの過度な期待を抱いていた。9月のFOMCは0.75%ポイントの利上げで変わらないものの、米CPIを受けて、それ以降のFOMCではFRBのタカ派姿勢が緩むと期待していた。しかし、11月のFOMCも0.75%ポイントの利上げが有り得るとの声も出ているほか、9月の1.00%ポイントとの声も出ている。
「きょうのCPIはインフレが戻るまでに長い道のりがあることを思い知らされた。インフレが下降軌道に乗り、FRBがアクセルを緩めるという希望的観測は少し時期尚早だったのかもしれない」といった声も聞かれた。
ユーロドルは再びパリティ(1.00ドル)を割り込む動き。米CPI発表前は1.02ドルをうかがう動きが見られていたが、米CPIを受けてその水準を突破すれば、リバウンド相場に入るとの期待も膨らんでいた。しかし、その期待は一気に後退している。
市場からは、ドイツもユーロ圏もこの冬は不況から脱出できないとの見方が出ている。この日は9月調査のドイツZEW景況感指数が発表になり、マイナス61.9と10年ぶりの低水準に落ち込み、現状判断もマイナス60.5となっていた。ドイツがすでにリセッション(景気後退)に突入している可能性を示唆する内容で、ユーロ圏でも同様だという。
ロシアのガスプロムが9月初めに、ノルドストリーム1によるガス供給を無期限で停止すると発表したこともあり、この見方はさらに強まったとしている。むしろ、大きな不確定要素は、避けられない景気後退の深刻さと持続性だという。
ポンドドルは一気に1.15ドルを割り込む展開。この日発表された8月の米消費者物価指数(CPI)に市場は失望感を強めている。ポンドドルはきょうの下げで21日線に跳ね返された格好となっており、下向きの流れを継続している。
明日は8月の英消費者物価指数(CPI)が発表予定。食品・エネルギーを含んだ総合指数で前年比10.0%と、引き続き高インフレが見込まれている。英中銀の追加利上げの根拠となる可能性があるが、ポンドに対する投資家心理の改善にはほとんど繋がらないとの指摘も出ている。インフレは8月にさらに加速し、英中銀がインフレ対策として十分なことをしていないことを示す可能性があるという。
英中銀が22日の政策委員会(MPC)で0.50%または0.75%ポイントの利上げを行ったとしても、インフレ調整後の実質金利はしばらくマイナスに留まる可能性が高い。このような背景から、投資家はまだしばらくの間、ポンドを懐疑的に見る可能性が高く、引き続きポンドの下振れリスクを見ているという。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美