きょうは米株式市場も大幅安となったが、これまでであれば、リスク回避のドル買いの反応ではあったが、きょうは違ったようだ。FRBは前日のFOMCでこれまで以上にタカ派色を強めたが、概ね今回の利上げサイクルの最終形を示して来た印象もある。年内に急速に利上げを実施し、3%台半ば程度まで政策金利を引き上げる。来年以降は指標に沿って小幅に調整といった感じだ。ただ、これまでの急速なドル高で市場もそのシナリオをだいぶ織り込んでいる。一方、他国の中銀はどの程度まで利上げを積極的に実施するのかまだ未知数の部分が大きい。その点ではFRB以外の中銀のほうが余力があるとも言える。インフレ率については米国も英欧も大差はない。
明日は日銀決定会合が予定されている。きょうはスイス中銀がサプライズ利上げを実施したことから、日銀への期待も一部出ているようだが、恐らく現行の金融緩和継続を強調してくると見られている。日銀は各方面から圧力がかかっており、ファンド勢からは日銀の姿勢に反旗を翻し、日本国債の先物を売る動きが出ている。しかし、それらの圧力を受けて日銀が利上げに踏み切ることはないとも見られている。日銀の威信にもかかわるとの声も聞かれた。
日本の状況を見ると、日銀はまだマネタリーベースを拡大する余地が十分に残っているという。海外と比べれば、日本のインフレはまだ相当低く、条件が全く違うと指摘していた。
ユーロドルは買い戻しが強まり、一時1.06ドル台まで急上昇。ロンドン時間には1.03ドル台に下落していた。ECBは前日に緊急理事会を開き、ユーロ圏の国債市場の断片化対策を協議し、新たなツールを準備するよう各部署に指示した。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の満期償還金の再投資で柔軟性を高めることもあらためて表明。これを受けて急速に上昇していたイタリア債など南欧債の利回りは低下している。
ラガルドECB総裁がきょうのユーロ圏財務相(ユーログループ)の会合に出席し、ECBが国債のスプレッドに制限を設ける計画だと述べたとの報道もユーロ買いを加速させた。
市場からは、ECBの断片化対策はECBに大幅利上げの道を開く可能性があるとの指摘も出ている。ECBの市場断片化防止ツールの加速度的な展開で、より迅速に利上げサイクルの最終点と見られている2%に到達できるという。ECBは7月に0.25%ポイント、9月、10月、12月に0.50%ポイントの利上げを行うと予想しているようだ。
ポンドドルはこの日の英中銀金融政策委員会(MPC)を受けて激しく上下動の末、買い戻しが強まった。一時1.24ドル台まで急上昇。
英MPCでは0.25%ポイントの利上げを実施した。政策委員9名のうち3名は0.50%ポイントの利上げを主張。前日は据え置きを主張する委員がいるのではとのハト派な観測も出ていただけに、今回の決定はタカ派な雰囲気もあった。しかし、発表直後のポンドは売りの反応を強めた。前日のFOMCの0.75%ポイントの大幅利上げとタカ派なコメントを受けて、英中銀も大幅利上げを実施してくるのではとの観測が急速に広がっていたようだ。
ポンドドルは1.20ドル台半ばまで急速に下落したが、英中銀の声明は、必要なら0.50%の大幅利上げの可能性を示唆したほか、インフレが年末までに11%を若干上回る水準まで上昇する可能性を示唆していたこともあり、次第にポンドは買い戻しが膨らむ展開を見せた。ただし、NY時間に入ってからのポンドドルの上げはドル売りによるところが大きい。今回の英MPCを受けて市場では、次回8月は0.50%ポイントの利上げを見込む声が増えている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美