米国債利回りが低下する特段の材料は見当たらないが、市場からは、FRBがインフレ対策にどこまで踏み込むかについて、市場は徐々に積極的な動きを控え始めているとの声も聞かれる。前日の米消費者物価指数(CPI)でコア指数の前月比の伸びが緩んだことで、インフレ圧力はそろそろピークアウトの予兆も出ているとの見方も出ている。特に政策金利に敏感な米2年債利回りが大きく低下しており、市場はFRBの積極引き締めを期待した動きを一服させているとの指摘もきかれた。
イールドカーブも今月初めに見られた景気後退を予兆する逆イールドが解消している。金利上昇へのレジームシフトのシナリオは出尽くし、利上げサイクルのターミナル・レート(最終地点)は、以前考えられていたより低くなるかもしれないとの見方も出ているようだ。そうなるとドル買いも今後、一服してくる可能性が高まってくる。
ユーロドルは3月に付けた直近安値1.08ドルちょうどを試す動きも見られていたが、NY時間に入って1.08ドル台後半まで買い戻されている。明日はECB理事会が予定されている。ウクライナ情勢によるユーロ圏経済への影響に不確実性が強まる中で、今回は政策自体に大きな変更はないもの見られている。しかし、市場では今後の引き締めのシグナルをさらに発信すると見られている。ECBは資産購入プロフラム(APP)の終了時期をより具体的に示し、恐らく夏の間に設定するという。そして、ラガルド総裁は利上げに対する市場の期待に明確に反論することはなく、9月の利上げ開始に道を開くと思われているようだ。
市場では、年内2回以上の利上げを想定する動きが出ているものの、今年については利上げは0.25%ずつ2回の利上げに留め、-0.50%の中銀預金金利をゼロに戻すことが限界との見方もあるようだ。
ポンドドルは1.31ドル台まで買い戻されている。この日発表の英消費者物価指数(CPI)を始めとした英インフレ統計を受けてロンドン時間には売りが強まり、1.2975ドル近辺まで下落する場面も見られていた。高インフレを示す内容ではあるが、逆にそれによる景気への影響が気掛かりとなっているようだ。
しかし、この日の英CPIは前年比7%に加速し、英中銀は次回5月の金融政策委員会(MPC)で政策金利をさらに0.25%引き上げ、1.00%とするとの見方を正当化する。今回の数値は英中銀の予測を上回っており、世界的な供給不足とロシアのウクライナ侵攻による生産者価格とエネルギー価格高騰がまだ、CPIに十分に転嫁されておらず、インフレはさらに上昇を加速させる可能性があるという。
昨年末から年始にかけて、インフレ指標の上振れサプライズが続いており、現在のインフレ急上昇のピークと長さは依然として不透明な状況が続いている。4月からはエネルギー会社が一般家庭に請求できる光熱費の上限価格が54%引き上げられたため、4月の英CPIは9%まで上昇との見方も出ているようだ。
この日はカナダ中銀の政策発表が行われたが、0.50%の大幅利上げと4月25日での国債購入の停止を発表した。大方予想範囲内として市場の反応は限定的だったが、ドル売りが強まり出す中で、カナダドルは徐々に買いの動きを強めている。マクレム・カナダ中銀総裁は会見で「政策金利は中立金利への上昇を見込む」と述べていた。カナダ中銀は中立金利の水準を2ー3%を想定している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美