朝方発表になったISM製造業景気指数が米リセッション(景気後退)への懸念を高める内容となったことが市場を圧迫。本日の21日線は134.60円付近に来ているが、目先の下値メドとして意識される。
その米景気後退だが、4-6月(第2四半期)のGDPも第1四半期に続いてマイナス成長となり、2四半期連続のマイナス成長という定義上の景気後退に陥る可能性も指摘されている。4-6月の米GDPは前期比年率換算で0.5%減と、1-3月期の1.6%減に続きマイナス成長が続くと予測しているようだ。ただ、上半期(1-6月)については、雇用など他の指標は力強さを示していることから、必ずしも本来の景気後退を意味するわけではないという。
一方、来年にも陥ると警戒されている本来の景気後退については、辛うじてを回避できるとの見方も出ている。米GDPは今年は2.1%、23年は1.2%を予想しており、景気後退はかなりの可能性で起こりそうだが、米成長見通しの悪化が広範な不況に発展することを防ぐ緩衝材はまだ残っているとしている。企業と家計の双方の健全さと労働市場の堅調が経済を支えるという。
ユーロドルは一時1.03ドル台に下落。強いサポートとして意識されている1.04ドルを再び割り込み、下値警戒感を強めていた。その後、米株もプラスに転じ、リスク回避の雰囲気も一服していることで1.04ドル台に戻しているものの、来週以降、年初来安値の1.0350ドル付近を試しに行くか注目される。
市場からは、ECBがFRBと同様の引き締めを実施できるか懐疑的に見ていることがユーロを圧迫しているとの指摘も出ている。ECBはユーロ圏の国債市場の断片化(フラグメンテーション)リスクへの対処を迫られており、今月の理事会では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で保有した国債の償還をイタリアなど南欧債の購入に充てる政策を打ち出すと見られている。その場合、FRBがコミットしているような強力なバランスシート縮小は実現できない。
一方、域内のインフレ圧力は続いており、この日発表の6月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は8.6%まで加速し、過去最高を更新した。ECBには大幅利上げを求める声も強まっている。ECBは、断片化対策と利上げという、相反する綱渡りのような政策を同時に行おうとしており、それはユーロにとって圧迫要因になるという。
ポンドドルも売りが強まり、心理的節目の1.20ドルを割り込む場面が見られた。先月は1.1935ドル近辺まで下落し、2020年3月以来の安値を更新していたが、その水準が目先の下値メドとして意識される。
本日は6月の英PMI確報値が発表になっていたが、速報値から下方修正されていた。エコノミストからは、今回のPMIのデータは、英製造業は需要低下にもかかわらず、必要以上の在庫を抱えていることが示唆されており、今後メーカーが在庫を解消しようとするため、生産インフレはまもなく低下する可能性があるとの分析も出ていた。
英PMIは6月に過去2年間の最低水準まで低下したが、高インフレが需要を圧迫し、新規受注が減少したことが足を引っ張った。先月に工業用金属を含むほとんどのコモディティ価格が急落したことも、早期の生産インフレ抑制を支援すると指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美