下記のドル円の確率を見ると、現値が先週末と同水準で終えたことから、確率も前週と同水準となっている。140円を視野に入れた動きは続ているものと思われるが、次第に上値に慎重になっている気配も出ている。
来週以降7月末までに140円に一度でも到達する確率は33.9%の一方、130円は31.4%と先週と変わらずだった。どちらも30%台となっており、上下どちらにもリスクを感じ始めている印象もある。
市場では来年のリセッション(景気後退)入りへの警戒感が高まっており、このところ発表の米経済指標も消費者信頼感指数やISM指数といったセンチメント系の指標中心に弱い内容が相次いでいる。
FRBの積極利上げも市場が想定しているほど長期化しないのではとの見方から、株高・ドル売りの動きも見られていたが、当のFOMCメンバーのほうは変わらずにタカ派姿勢を強調しており、今週のパウエルFRB議長の講演では、いまは景気よりもインフレ抑制が最優先事項との認識を強調していた。週後半にはドル高が復活し、円安のサポートで底堅く推移していたドル円も137円ちょうどまで上昇していた格好。
ドル高・円安の流れに変化があるとすれば、どういう条件が考えられるのであろうか。1つは高インフレが鎮静化の兆候を見せ始め、ピークアウト接近の雰囲気が市場に広がることであろう。秋口にはとの期待もあるようだが、いまのところは早くても年終盤との見方が多いようだ。
そして、予想される景気後退が、FRBが積極利上げを躊躇しなければならないほど、深刻なものになりそうだという雰囲気が強まることも挙げられるであろう。高インフレの状況がそのままであれば、スタグフレーションということになる。その場合、株安・ドル安・円高のシナリオが想定されそうだ。現段階で市場は30~50%程度の確率で景気後退入りの可能性を見ている。ただし、景気後退に入ったとしても浅い後退に留まるという見方が有力。もっとも、あまり期待したいシナリオではない。
最後に「日銀が動く」というのも予見可能ではあろう。ただし、日銀が引き締めに舵を切り始めたからといって、欧米と比較すれば程度は知れている。なぜならば、日本のインフレが欧米ほど深刻ではないからだ。少なくとも英国のような「生活危機」といったレトリックは出てこないであろう。円安がやや過熱気味になっているので、急速に円高に動く可能性は考えられるが、短期的な動きに留まると見ている。それだけでは、110円や100円を再び目指す流れにはならないであろう。
◆来週以降7月29日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
140円:33.9%(33.2%)
139円:44.6%(43.9%)
138円:57.2%(56.6%)
週末終値:135.21円(135.23円)
133円:67.7%(67.6%)
132円:54.1%(56.0%)
131円:41.9%(44.1%)
130円:31.4%(31.4%)
◆来週以降8月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
140円:47.9%(47.1%)
139円:57.2%(56.4%)
138円:67.4%(66.8%)
週末終値:135.21円(135.23円)
133円:77.7%(77.6%)
132円:67.7%(67.6%)
131円:58.1%(58.8%)
130円:49.0%(49.0%)
※ドル円のオプション取引から算出
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美