今週は週後半になってドル円の上げも一服していた。一時129.40円付近まで上昇し、130円をうかがう展開も見せていたが、130円台に到達することなく伸び悩んでいる。とはいえ、米インフレ警戒とFRBの積極引き締めを材料にしたドル高の勢いは強く、ドル円のローソク足も週足で7週連続で陽線を描いている。米10年債利回りも一時2.97%まで上昇し、大きな節目の3%をうかがう動きも見せていた。
下記のドル円の確率では、来週以降5月末までに130円に一度でも到達する確率は71.3%に上昇。一方、125円の確率も41.8%といったところだ。確率的には「調整への不安感もあるが、上値期待は依然根強い」といった印象だ。
市場は依然としてFRBの積極引き締めへの期待を高めており、短期金融市場では次回5月以降9月FOMCまで連続4回の0.50%利上げを織り込む動きが出ている。このところの市場のパニック的な動きは行き過ぎとの声も出ている。「インフレは今年がピークで、来年に向けて着実に低下し、次第に金利は落ち着く可能性がある」という。
市場は、FRBは年内に中立金利までは利上げを行うと見ている。中立金利とは簡単に言えば、長期のインフレ期待と潜在成長を考慮し、引き締め気味でもなく、緩和的でもない、程よい水準と考えてもらえば良い。人によって見解が異なるのだが、2.25%もしくは2.50%程度がコンセンサスとなっているようだ。
短期金融市場では一時、FRBが年内に2.85%水準まで政策金利を引き上げるとの見方を織り込んでいた。FRBのFF金利の誘導目標で言えば2.75%-3.00%といった水準である。中立金利よりも上の水準まで年内利上げ織り込んでおり、市場がそろそろと考えてもおかしくはない。本当に米インフレが近々ピークアウトするのか、データを確認したい局面に入って来たとも言えるであろう。
なお、130円をうかがう水準まで上昇したドル円だが、本邦勢からは日本の当局の対応への期待も出ている。今週は日米財務相会談が行われ、鈴木財務相とイエレン米財務長官が会談した。最近のドル円相場の動きを議論したことを明らかにし、「通貨当局で緊密に連携」との文言が報じられている。協調介入との文言も一部から流れていたが、イエレン長官が介入を容認するとは、とても思えない。日本の経済界からの突き上げも激しく、財務省もがんばったのであろう。何とか頼み込んで「連携」の文言だけは引っ張り出したのかもしれない。イエレン長官には“切手”でも送っておいたほうが良いかもしれない。
しかし、財務省が介入を実施したとしても一時的な効果しか望めず、今回はドル売り介入になることから、外貨準備を失うだけとの声も出ている。また、日銀が引き締めに若干舵を切ったとしても、FRBが積極引き締めに動いている中ではドル円相場への効果は限定的との声もあるようだ。来週は日銀決定会合が予定されているが、黒田総裁はいまのところ動く気はなさそうだ。
◆来週以降5月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
132円:39.9%(18.8%)
131円:54.3%(27.7%)
130円:71.3%(39.2%)
128.50円(週末終値)
125円:41.8%(74.2%)
124円:29.3%(57.4%)
123円:19.6%(42.5%)
◆来週以降6月30日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
132円:51.6%(29.2%)
131円:63.9%(38.3%)
130円:77.6%(49.3%)
128.50円(週末終値)
125円:55.2%(80.1%)
124円:44.0%(66.7%)
123円:34.0%(54.1%)
※ドル円のオプション取引から算出
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美