下記のドル円の確率は、来週以降5月末までに133円に一度でも到達する確率は前週の30.2%から58.3%に上昇。一方、127円の確率は74.4%から47.6%に低下している。来週はFOMCが予定されているが、それを通過して、130円を固めることができるか注目される。確率的には「高値警戒感はあるものの、上へのレベルシフトの期待も強まる」といった印象だ。
ドル高については引き続きFRBの積極利上げへの期待に伴う金利相場がドルをサポートしていることに加え、今週は中国のロックダウンが上海のみならず、北京にも導入されるのではとの警戒感に伴うリスク選好がドルを支えた。
日銀は大方の予想通りに現行の緩和政策を据え置いた。黒田総裁は会見で「粘り強く金融緩和を続ける」と述べていた。海外勢中心にエコノミストの1割程度は円安に対して日銀は何らかの行動を取るのではとの見方もあったが、その予想は外れた格好。
一部には不満があるのかもしれないが、日銀の緩和据え置きは、至極当然の行動ではある。中央銀行は「通貨の価値」を操作する機関ではなく、インフレや成長の見通しに基づいて「金利」を操作する機関だ。新興国の中には為替相場に合わせて金利を操作する中央銀行もあるが、主要国では否定的だ。
日本のインフレは携帯料金引き下げの影響もあり、足元は非常に低い。値上げラッシュが伝わっていることもあり、夏場以降は携帯値下げの影響も徐々に薄れ、インフレは急速に上昇する可能性がある。しかし、それでも欧米などに比べれば天地の差だ。日銀が今週公表した展望レポートでは、インフレ(消費者物価)見通しが、食品を除いたコア指数で、22年度が1.9%となっていた。23年度、24年度に至っては1.1%といったところだ。日銀は目標である2%にさえも届かない見通しを示している。
日本のインフレは海外のインフレと比較すれば、明らかに低く、なぜか低位で安定している。欧米から見れば、不思議の国ジャパンといったところであろう。理由は定かではないが、良し悪しは別として、あまりにも長年のデフレで、“インフレ君”も完全にやる気を失っているのかもしれない。なお、インフレ君とは消費者のマインド。
さて、今週の市場では、「景気後退」という不吉なキーワードが飛び交っていた。FRBの過度に積極的な利上げと中国経済の減速が、この不安なキーワードを呼び込んでいたようだ。一時米国債の長短の利回りが逆転する、いわゆる逆イールドが発生した際にも上記のキーワードが踊っていた。その後は逆イールドも解消され、一旦鳴りを潜めていたが、今週、再浮上した格好となっている。
今週は第1四半期のGDP速報値が公表されていたが、予想外のマイナス成長となった。これについては、オミクロン株、在庫投資、そして、純輸出の減少が背景に挙げられ、特殊要因との見方も出ている。年内は景気後退に陥る可能性は低いと見られている。ただ、来年以降は見方が分かれている。米大手金融からは、今後1年間の景気後退の確率を約15%、今後2年間では35%との予測も出ている。
来週はFOMCが予定され、0.50%の大幅利上げが確実視されている。その際、FRBが想定以上に利上げへの積極姿勢を強調するようであれば、市場が上記キーワードをさらに意識する可能性も留意したいところではある。市場はまた、6月、7月の連続での大幅利上げを織り込んでいるが、その辺も確認したいところ。市場では6月に0.75%の利上げ確率をほぼ五分五分で織り込む動きが見られている。
◆来週以降5月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
135円:24.1%(14.1%)
134円:33.8%(21.0%)
133円:45.9%(30.2%)
129.70円(週末終値)
127円:56.4%(74.4%)
126円:42.5%(53.8%)
125円:30.7%(43.8%)
◆来週以降6月30日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
135円:38.2%(24.8%)
134円:47.4%(32.5%)
133円:57.9%(41.7%)
129.70円(週末終値)
127円:68.3%(80.7%)
126円:57.1%(68.0%)
125円:46.8%(55.9%)
※ドル円のオプション取引から算出
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美