前日はインフレ長期化への警戒感や、今週金曜日の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて、米国債利回りは急上昇していた。しかし、同時に景気の先行きへの警戒感も高まり、リスク回避の雰囲気が米国債利回りを押し下げている。10年債の3%台は現状ではやや行き過ぎとの声も出ているようだ。ただ、市場のドル高期待は根強く、FRBによる一段の利上げ観測や米経済の底堅さを裏付ける指標で、引き続きドルは支えられるとの見方も少なくない。
一方、円のほうだが、約20年ぶり円安水準の連日更新にもかかわらず、政府・日銀の当局者の発言は抑制的なものに留まっている。以前とは雰囲気に変化が見られているのか、円安のプラス面を期待する声も出ているようだ。本日は日銀の黒田総裁が国会に召集されていたが、「安定的な円安の動きであれば、日本経済全体にはプラスに作用」と説明していた。鈴木財務相も「急速な変動は望ましくない」といった最近の定型の発言に終始している。
ドル円は戻り売りに押されているが、ユーロ円やポンド円といったクロス円は堅調な動きが続いている。
ユーロドルは1.07ドル付近まで戻す動き。きょうは一時1.06ドル台半ばまで下落していたが、本日1.0620ドル付近に来ている21日線の上は維持されている。木曜日のECB理事会を控えて下値追いにも慎重なようだ。
ECB理事会では7月利上げ開始が示唆されると見込まれているが、利上げ幅が0.25%ポイントになるのか、0.50%ポイントの大幅利上げになるのかはまだ見解が分かれている状況。確率は半々といったところ。
市場からは、ECBが7月から12月までの各会合で中銀預金金利を0.25%ポイントずつ引き上げ、2023年第1四半期にもう一度引き上げて0.75%まで上昇させ、その後は利上げサイクルを一旦停止させるとの見方が出ている。2023年第1四半期にはインフレは低下傾向に入り、今度はユーロ圏の成長が減速局面にある可能性を理由に挙げている。ただ、足元はインフレの持続性および上向きリスクがECBの利上げ圧力を高めているという。
ポンドドルはロンドン時間の朝方に1.2430ドル付近まで下落し、21日線を下回る場面が見られていた。ただ、この日発表の英サービス業PMIが速報値から上方修正されたこなどもあり、買い戻しが膨らんでいる。NY時間に入ると、ドルが戻り売りに押されていることから、1.26ドル付近まで一気に買い戻しが加速する展開。
前日にジョンソン首相が不信任投票で勝利したが、市場を大きく動かすことはなかった。しかし、首相が政治的支持を高めようとして、EUとの北アイルランド議定書の交渉や財政政策強化に動き出す可能性があるとの指摘も出ている。
北アイルランド議定書の交渉で首相が強硬姿勢を示せば、EUとの緊張関係が生まれ、追加の財政出動で家計の生活費危機を支援を促す可能性もあるという。どちらの戦略も現在のインフレ圧力に拍車をかけるとしている。北アイルランド議定書への厳格なアプローチについてはポンド安を招くとしている。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美